[鳥栖戦「後」の思い]
渚@管理人@PC
10/30(Wed) 13:32

それは、鳥栖戦後のことである。
いつもなら、勝利の余韻にひたりつつ選手のクールダウンを見つめ
続ける観客たちも、さすがに今日は試合終了とホイッスルと同時に
席を離れ始める。その背中を追うように、「清掃ボランティア」を
呼びかける場内放送が流れていた。

そして、観客もまばらになったメインスタンド。
私の目は、ある一点に釘付けになった。

メイン指定S席の、座席に残されていたもの。

それは・・・「おでん」だった。

メインスタンド前で売られている唯一の温かい食べ物、おでん。
それがすでに湯気も立たず、あの使い捨ての白い器のなかで、
冷たくなっていたのであった。身じろぎもしない玉子。
黒光りする昆布。それらがまるで器に盛られた時そのままのような
姿で、ビールの紙コップと並べて座席に置いてあったのである。

辺りを見回しても、この「おでん」の所有者であろう(あった)と
思われる人物は見あたらないのである。

私は思った。

「不可解である。」

これは何かのメッセージなのか?
無言の抗議なのか?それとも「祈り」なのか?
まるでお供え物のように、器の上には箸までそろえてある。

すでに場内清掃が始まっている。
ああ、私はどうしたらいいのだ。
果たしてこの「おでん」をゴミとして処分していいのか。
その器に手をふれたとたん、どこからか「それは俺の食い残しだ!
ゴルァ!」と怖いオヤジが登場する可能性はないのか?
様々な思いが心を駆けめぐる。

結局私には、その「おでん」に近づく勇気がなかった。
そのままくるりと踵を返す。
見なかったことにしよう。それしかない。やむを得ないのだ。
自分にそう言い聞かせた。

何とも後味の悪いことだった。
なんとしても、この気持ちを払拭せねばならない。
次のホームゲームは、良い準備をして臨みたい。
[] [] [] []